路面電車とまちづくり


書 評

『室内』1999.7 No.535

 この本の編者であるRACDAとは「路面電車と都市の未来を考える会」の通称だという。岡山市に拠点をおくグループである。
 最盛期の昭和20年代中頃には、全国の街に走っていた路面電車。その後、自動車の発達、市街地の郊外化現象、バスとの競合などで衰退。次々と路線が廃止になった。
 そんななか、岡山には、明治45年の開業以来、現在も走り続ける路面電車がある。これを単に「守る」ということではなく、もっと有効に活用して、ヒューマンスケールの街をつくれないものか、というのがRACDAの活動だ。
 本書には、そのための調査やこれまでの経緯、今後の計画などを軸に、他県や世界各都市の路面電車事情が報告されている。
 実はこの20年間に、従来の路面電車とは違う、LRT(ライトレール・トランジット)と呼ばれる新しい路面電車の交通システムが、世界23カ国52都市で開業しているという。路面電車は、どこかノスタルジックな過去の交通手段と思われがちな、わが国の状況とは大きく違う。
 その背景には、環境やエネルギー問題がある。これまでの反省を含め、将来有望な交通手段として路面電車は見直され、発展を続けているのだ。
 わが国には、現在19都市で路面電車が走っている。意外にも多いので驚いた。もっと増えればいいのに、と思う。

(由)


学芸出版社
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