はじめに

は じ め に




 
 地球環境問題が人類の将来にとってアキレス鍵となる可能性は大きい。われわれ日本人、なかでも大都市圏に住み働く者にとって、自らが及ぼしてきた環境影響、自らの文明の仕組みの持つ問題点を見極めつつ、地球社会全体に向けて有益な智恵を発信し、具体的に行動することが課せられているのである。
 
地球環境関西フォーラム都市環境部会の活動から

 1 フォーラムの活動経過
 地球環境関西フォーラムは、以上のような課題を踏まえ、産官学が共同し、地球環境問題の考え方とその具体的行動について検討することを目的として一九九〇年六月発足した。その検討の成果は、まず一九九二年六月に「地球環境関西フォーラム・アクションプログラム」として発表された。これはフォーラムを構成する各主体自らの行動指針として、とりまとめられている。これに続いて、関西がすでに世界的にみて高水準の地球環境技術開発関連の研究機関を数多く持ち、わが国における先駆的活動を展開しつつある地域となっていることを踏まえて、一九九四年七月に「環境首都関西を目指して」を公表した。これはフォーラムの二年間の活動成果を活かして、関西の先進的取り組みを背景に「環境首都関西」構築のためのビジョンを提示したものである。そこでは「適正消費、極少廃棄、リサイクル等を目指す社会を構築するための具体的施策を提示し、関西圏の特色を活かした新しい循環型社会づくりのモデル提案」をおこなっている(「環境首都関西を目指して」序文より・地球環境関西フォーラム・一九九四年七月)。
 2 都市環境部会の活動
 このビジョンにおいて「環境首都関西」のデザイン提案を分担したのが都市環境部会(但し一九九四年七月以前は分科会として活動していた)であった。この部会は、併せて「持続可能な関西都市圏づくり」(一九九四年七月)を部会成果として発表し、上述のビジョンの内容を詳述している。
 この部会は、関西都市圏を二一世紀に向けて持続可能な都市に育てていくための、各部面にわたるデザイン提案をおこなう目的で発足した。フォーラムの関係団体に属する産官のメンバーと、数名の大学研究者(横断的研究分野)をもって構成し、活動を続けている。都市環境部会は上記の提案を公表した後、具体的行動のひとつとして、中国山東省煙台市における今後の都市づくりに向けた持続的開発のための合同研究会を、現地において実施した。それによって、いま発展途上にある中国沿海州都市とわが国の都市計画との技術交流に、一定の可能性を見いだす成果を挙げた。中国都市においても、単なる都市の近代化追求の時代は過ぎようとしている。その可能性をわれわれの経験に結びつけ、実りある成果を得る素地が確認出来たことは、意義あるものと言えよう。
 3 持続的都市づくりへのリーディングプロジェクト
  このような具体的活動と並んで本部会では、ビジョンにおいて明らかにしたリーディングプロジェクトの検討に入った。検討対象を本フォーラムの中心都市である京阪神三都市に置いて、まず各都市における環境行政並びに都市整備プログラムに関わる、環境に配慮した諸施策について報告を受け、その中から大阪都心の二地区をプロジェクト対象として選定した。本来は、京都市、神戸市についてもプロジェクト対象を選定すべきであったが、京都市については今後の課題とし、神戸市については震災経験もあって当初考えつつあった臨海地域における対象を保留している。ただし大阪地域プロジェクトの検討成果を、同市においても活用願うことにした。
  その後約二年間の研究会を経て、グランドシステム(関西圏全体)並びにローカルシステム(中之島西部並びに此花地区)についての成果を得るところとなった。


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