都市のリ・デザイン

あとがき


 ある出版社の方と話をしていた時だが、これから期待されるべき本に関連して次のような話をされた。

 「環境問題とか、産業や経済問題とか、都市政策もなかなか複雑になっています。環境対策とか個別の問題をあつかった本は多いですが、やはり都市は総合的だから、全体的に考えないといけませんね。ところで、全国の市長さんや議員さんはどんな本を読んで勉強しているのでしょう。ドイツでは、市長さんや議員さんが読める都市づくりの本が出版されていると聞きます。日本ではなかなかそういう本がないですね」。

 たまたまの会話であったが、この話はしばらく耳から離れないでいた。考えてみると、本当に、そのような本が少ないのである。そこで善は急げと、出版を目指した研究会の設置を呼びかけ、本書の著者グループである他の4名の賛同を得て、研究会がスタートした。1997年4月のことである。

 このグループの研究趣旨は、当時(財)21世紀ひようご創造協会が進めていた研究課題と共通するものがあり、この研究会を、同協会の研究事業「大都市リノベーション研究委員会」として位置付けていただいた。この機会を与えていただいた、同協会の福田丞志総括理事には感謝申し上げたいと思う。

 1997年の年末、「二一世紀の都市づくり三田国際会議」の準備委員会に私と著者の一人である加藤氏が参加することになり、研究会の展開と会議の準備が並行して進むことになった。この会議は、1998年7月に開催され、会議の中で、ドイツから招待されたヘルベルト・ツィンマーマン氏によって「新アテネ憲章」の紹介があり、この憲章の全文が私に手渡されたのである。

 「新アテネ憲章」や「二一世紀の都市づくり三田国際会議」の内容は、私たちが進めていた研究と大いに重なり合うものがあった。この会議から得られた成果の一部が序章に述べられているが、本書全体にも少なからず反映していると思う。

 なお、末尾になったが、編集にあたられた前田裕資氏、越智和子さんに感謝の意を表します。

  1999年2月

鳴海邦碩


学芸出版社
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