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市民参加のまちづくり

マスタープランづくりの現場から




書  評


『ECHO』80号


市民参加ワークショップによる成長するプランづくり

 平成4(1992)年の都市計画法の改正で、つくられることとなった都市計画マスタープランは、「計画の原案作成プロセスへの市民参加」が大きな特徴です。しかし、参加といっても、多くの自治体では、アンケートや住民説明会、市民団体役員の検討委員会などへの参加などにとどまっています。
 このような自治体が多い中、三重県伊勢市では、市民が計画策定に直接参加した、都市計画マスタープランづくりが行なわれています。本書では、その内容や課題をわかり易く紹介しています。
 伊勢市でのマスタープランづくりは、行政のつくった「たたき台」に意見を述べるのではなく、公募で集まった市民が、ワークショップ方式を通して参加をしています。第1回のワークショップは、まちづくりの課題と方向性をさぐるため、「まちかどウォッチングと点検地図づくり」です。これを受けて第2回は、進学・就職・結婚・子育て・定年退職など、人生のさまざまな局面について、あらかじめ用意された項目の中から、アンケートに答える「まちづくり人生ゲーム」のワークショップです。トランプ式のカードを整理し、「課題の整理とまちづくりテーマの設定」を行います。第3回は、参加者がテーマ別に、まちづくりの現状や課題を勉強するとともに、テーマごとの計画案の作成です。最終回は、テーマごとに出された計画案を整理し、参加者全員の評価やアンケートを行い、市民のマスタープラン案としてまとめています。

〜ワークショップの留意点と課題〜

 本書では、ワークショップ(WS)を始める留意点として、WSの位置づけを明確にし、明文化して参加者全員の理解と合意を得て進めていくことが、重要であると指摘しています。
 また、ワークショップを進める課題としては、(1)スケジュール管理をうまく調整する仕組みをつくること (2)情報公開と資料配布量との関係で、資料の減量化をどう工夫するか (3)企画運営側および参加者側の人的負担・経済的負担をどう軽減するか、の3点をあげています。

出入り自由のサロン方式によるプランづくり

 調布市の都市計画マスタープラン市民案作成作業は、非常にユニークな取組みです。市役所都市計画課会議に、市民有志が毎週集まって、2年半をかけて、つくられたものです。きっかけは、行政の呼びかけですが、その後、市民が「調布まちづくりの会」をつくり、プランづくりをするようになりました。市民参加の形態は、「出入り自由」で、テーマ別ワークショップなどをしながら、計画案を策定し、市長に提案しています。
 調布市の取り組みで、特に学ぶべきことは、「市役所の会議室を開放する」など、市担当者と市民が取り組みの実態にあわせて、仕組みづくりを実現していったことです。

まちづくりとインターネットの活用

 21世紀のまちづくりは、パソコン通信やインターネットをどう使うかが、大きなテーマです。本書で紹介されている、神奈川県大和市の「インターネットを活用した都市計画マスタープランづくり」や、@ニフティーの「都市計画フォーラム」、「枚方まちづくり NET」などは、パソコン通信やインターネットを活用したまちづくりの、多くのヒントが書かれています。
 本書は、都市計画マスタープランを中心に書かれていますが、市民参加のまちづくりを実現したいと考えている市民や行政職員、専門家に、お薦めの1冊です。

(草)



『環境緑化新聞』 1999.7.1

 マスタープランづくりに市民が参加する事は、最初の発案段階から参加できる点で重要であり、意義のあることだが、基礎的な知識や学習なしにはあり得ない。著者は、心ある市民や自治体職員に立ち上がってもらうためには、先進的な事例を紹介することが必要とし、実践現場の当事者から詳しく状況を報告してもらい、構成を大きく現場とポイントに分け、一冊にまとめた。
 東京理科大学教授である著者は大学院の講義を商用パソコン通信「ニフティ」の「都市計画フォーラム」十八番会議室にオンライン大学院として1995年より公開。本書はその中の一般社会人講師の講義中心だ。
 例えば、現場の内容は大きく三タイプに分かれ、@自治体策定の枠内での市民参加の先進的な手法として、策定プロセスでインターネットを活用した大和市、大規模なワークショップによってマスタープランをつくった伊勢市の二事例A市民が自治体とある種の緊張関係にある事例として、日野市の市民版マスタープランB自治体・市民間の協働による、市民有志が中心になって策定した異例的な調布市、市民・市職員などのまちづくりの担い手を世に送り出した流山市の創生塾の二事例を報告など。





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