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   おわりに

   ユニバーサル・デザインを考えるとき、対象が広く非常に茫漠とした分野であるという印象がある。「Universal」には、「万国の」「万人の」という意味があり、「国際化」という言葉と精神面で共通する部分があると思っている。私は、「国際化」を互いに相手を認め合うことだと考えている。

   ここで取り上げているユニバーサル・デザインは、できるだけ多くの人びとが利用できるようにしようという試みであり、同時にそのための努力を意味している。今までの計画や設計の中では「平均的な日本人」を対象としてすべてがデザインされてきた。または、ある特定の人びとのためにデザインがなされてきた。

   我われが今考えなければならないのは、できるだけ多くの世代の人を対象としたデザインである。プランナーやデザイナーは、自らがその世代のある部分にしか位置していないということを理解する必要がある。

   外部空間を扱う場合、建築・土木・造園などをバックグラウンドにもつさまざまな人びとが専門家として計画や設計に携わってきた。今後、いろいろな世代や健常者・障害者といったバックグラウンドを計画や設計の中に取り入れるためには、互いに相手を認めあい、それを計画や設計の中にさりげなく取り入れる努力が必要になる。その一つの試みが、住民参加であり、ワークショップ方式の公園設計であるだろう。

   米国で約30年前にプランナーに「環境」という問題が投げかけられ、物事の決定のプロセスが見直されたように、ユニバーサル・デザインは、福祉のまちづくり条例の条項を満たすというプロセスではなく、デザイナーに対して投げかけられたデザインプロセスそのものの問題であると思っている。

   本書の基礎となった「バリアフリー緑の空間計画」((社)日本造園学会編)は、1996年3月にまとめられたものであるが、出版にこぎつけるまで2年以上を要した。本委員会に参加された先生方、とくにディティール検討小委員長の増田昇教授(大阪府立大学)らのご尽力に深くお礼を申し上げる。また、この間、多くの協力を得た「人と自然の博物館」非常勤職員水野優子氏、および、筆者らを温かく支援していただいた学芸出版社の藤谷充代氏、永井美保氏に対しても感謝の意を表したい。

1998年5月
関本博史

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社団法人日本造園学会編『緑空間のユニバーサル・デザイン』

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