〈専門士課程〉建築施工


は じ め に


「建築施工」を学ぶ人たちへ

 建築学科の基本教科として,建築計画,建築施工,建築法規,建築構造と建築製図の5教科に大別される.これらの基本教科について,はじめて建築を学ぶ人のために適した教科書が少なく,多くの専門学校の現場から,平易でわかりやすく,なお二級建築士の教材としても活用できるテキストが求められてきた.
 この本では,著者自らが教壇に立ち,また長年にわたる二級建築士受験指導の経験に基づいて,私たち自身が使いやすいテキストづくりを目指した.
 これから初めて建築を学ぶ諸君は,ともすれば建築学は学ぶ範囲が広範で,なおかつ高い理数系の能力を必要とするように思われがちであるが,それは大きな誤解だと思ってもらいたい.建築は日々の生活行動と密接に関連している.その生活行動を,それぞれの分野ごとに詳細な検討を加えていくことで,今まで難解と思われていた事項も理解が安易なものとなる.
 また二級建築士受験を目指す諸君は,一次試験では4教科を受験した後に,二次試験の建築製図試験にのぞむことになる.近年,建築士試験は一級,二級とも非常に厳しい試験となり,合格率も一段と下がった.この本では,学科の基本解説の後に,各章ごとに過去の関連問題をのせた.この関連問題には,詳しく解答解説も加えてあるので,この部分も教材としてしっかりと活用してもらいたい.
 建築施工は,設計図書に示された建築物の内容を,施工者がその施工現場において「正確で迅速かつ安全に,さらにローコストに」工事を行うことである.特に安全面においては,法規上様々な規制がなされている.また,正確で迅速な施工を目指すには,技術的な面における工法上の検討,あるいは作業性能における高い能率の工法などの検討がなされている.コストの面では工事積算における検討も必要となる.
 このように建築施工という学科では,将来建築に関連する業務において知っておくべき最低限の現場実践的な理解を目指す学科といえる.
 この本では,二級建築士受験も考慮して,実際の工事順序と若干異なる部分もあるが,工事行程に従って,各工事ごとの章にまとめ,施工技術や工法の具体的な事項を学ぶ.