図説 建築材料


 建築材料には多くの種類があり、その分類方法にも特徴の異なるものがいくつもある。最近はいろいろな切り口で、建築材料を説明する教科書が多くなったが、初学者には内容が詳し過ぎるために、その修得に戸惑うこともあると思われる。
 そこで、本書では私がこれまで建築材料学を講義してきた経験を活かして、「講義ノートのような教科書」を目指した。記述にあたっては、材質別に分類した建築材料についての要点だけに絞った。
 建築材料も人と同じように、その個性を知って活かすことが大事である。建築物の骨組みをつくる材料は、建築物に作用する様々な荷重に対して、そこに居る人の安全を確保しなければならない。また、仕上げとなる材料は内や外の良好な環境をつくらなければならない。
 これらは、出来上がった時だけではなく、時間を経た後の建築物の良否にも大きく影響する。そのため、建築に携わる者にはその特徴だけでなく、適切な組立て方や取付け方についても、間違いなく理解することが求められる。
 こうしたことが体系的に学習できるよう、各材料の製造方法や実際の使われ方についても紹介するように心がけた。詳しく学びたい人のためには、参考となる文献を挙げるとともに、章末には一級建築士試験で出題された問題を参考にした演習問題を設けているので、自主学習に役立ててほしい。
 また、知っておいてもらいたい事柄や話題となっている事柄について、「知っておきたい」や「Coffee Break」で説明している。
 このような特徴をもつ本書が、建築学の初学者にとって水先案内の役割を果たしてくれれば、筆者にとって望外の喜びとなる。


執筆者を代表して 武田雄二