図説 やさしい建築設備


はじめに


 わたくしたちは長年にわたり、建築系大学、工業系専門学校で環境工学・建築設備の授業を担当してきました。「建築設備」は、建築学の分野からは、建築を志す方に、少々毛色が違う目で見られているようです。確かに関連する機械工学・電気工学は、それぞれの技術分野で建築学とは異色に見えるということは、あえて否定しません。しかし皆さんも、生活環境の向上、ライフスタイルの変動、 居住環境の変化、地球環境の変動から、建築設備の重要性が日ごとに増しているのを、ひしひしと感じておられるはずです。
 わたくしたちは毎年、新学期の始まる前には、何か良いテキスト・参考書がないものかと探し回るのが通例でした。機械工学や電気工学の専門分野に偏りすぎ、建築を志す方々には難解な文献が多く、卒業後、建築士や建築設備士等の資格試験で苦労しそうなものばかりで、「これ!」といったものがありませんでした。 そこで適切な授業を進めるため、昔はスライド・OHP、今はパワーポイントで、人間の感覚の83%を占めるといわれる「目」からの情報で、独自の講義録をつくって学生さんに配布してきました。
 本書はこの、「目からの情報」を重視し、図版や写真を多用し、分かりやすく編集しております。学術的な内容をベースにしているのはもちろん、実務的なことを加えた点が、他の設備の本との大きな違いです。現在、建築各分野で活躍の方々をはじめ、建築系の学生さんへのテキストとなり、建築士などの国家資格を取得するための導入書にもなるように企画しました。
 建築士試験では特に、「環境・設備が合否判定の鍵」を握っています。わたくしたちが受け持った大学・専門学校の卒業生の大半は、間違いなく資格を取得し建設業界の各分野で活躍されています。本書はその方々を培った講義録でもあります。
 内容は極力肩が凝らない形、即ち、学生さんたちが居眠りしないような形にまとめました。気楽にそして楽しく、目を通していただければ幸いです。
2017 年10月
伏見 建・朴 賛弼