図説 やさしい建築積算


はじめに

 建物を造るということはとても面白く、また夢のある仕事であるが、ひとつの建物が完成するまでにはたくさんの職種の人たちが関わっている。
 大きくは建築主と施工者の立場に分かれ、例えば設計者は建築主側の立場に立っているが、中にはその両方の人たちと関わる職種もある。
 その職種のひとつが積算である。
 同じ図面を見て積算しているにもかかわらず、両者に対する内訳書に記載される数量や項目は全く同じではない。
 「建築数量積算基準」という、公に決められたルールに則っていても、内訳書という最終形になった時点においてそれぞれ異なるものになる。
 それは内訳書を使用する目的や立場の違いが一因となって生じるのだが、いずれの場合においても、積算では「正しいことが当たり前」であり、正確でなければならないことに変わりはない。
 適正な建設コスト、透明性の高い建設コストが求められて久しい。それらを実現するためには常に精度の高い数量積算が求められる。
 昨今は積算ソフトも進化し、従前に比べると積算作業はずいぶんと楽にはなったが、それでも積算には図面を見るだけでなく、図面に描かれていないものを読み取るセンスと多様な知識が必要となる。
 この本は積算の基本をしっかりと身に付けていただくために必要なことを中心に、普段実際に積算業務を行っている方々と建築教育の現場を知る方が協力してまとめたものである。
 またそれ以外の積算に関連した内容についても最低限知っておいていただきたい内容について簡潔にまとめてある。
 まず、第1章では積算の概要として積算の役割や数量積算を行うときのルールや、積算業務の大まかな流れ、また最終的にそれをまとめる内訳書の書式に至るまで、基本的なことについて解説をしている。
 また第2章では鉄筋コンクリート造の建物を使って、土工事から躯体、仕上げと順を追って解説するとともに、実際にどのような計算になるのか、実例を示しながらその過程をわかりやすく解説してある。
 そして第3章と第4章では鉄骨造や木造の積算、改修工事の積算に加え、BIM などのこれからの新しい積算技術についても解説してあり、これから積算を学ばれる方だけでなく、積算とは普段かかわりの少ない方にとっても最適な書となっている。
 この本から建築における積算の重要性を学び取っていただき、その中から一人でも多く将来積算に関する仕事に携わってくれる方が生まれることを期待している。

編著者