改訂版 イラストでわかる消防設備の技術


改訂にあたって

 1993年に発刊されました『イラストでわかる防災・消防設備の技術』は、中井多喜雄先生の解りやすいユーモラスな説明と石田芳子先生の親しみやすいイラストで、これまで、大変多くの方に愛されて参りました。初心者にも大変わかりやすく、消防設備の設計・施工・点検・保全管理に携わる方に活用されてきたことと思います。(一社)日本建築協会は、本書の持ち味を生かしつつ、このたび、(1)現行法令との合致、(2)使いやすさの見直し、(3)本書の名称の3点に注目し改訂を行いました。
 消防設備は、我々の生活を守るために極めて重要なものであることは言うに及びませんが、そのことを痛感させられる大きな災害が生じるごとに、消防関連法令が改定されてきました。
 2001年の新宿区歌舞伎町の雑居ビル火災では、死者44名、負傷者3名に及ぶ大惨事となりました。この火災を契機に消防機関による立入検査及び措置命令に係る規定や、防火対象物定期点検報告制度、避難・安全基準の強化などが行われました。
 2009年には、老朽化した消火器の破裂事故が発生し、類似の事故が多発しました。これを受け、消火器に関する規格や基準が見直されました。
 2012年には、広島県のホテル火災(死者7名・負傷者3名)、2013年には、長崎市の認知症高齢者グループホーム火災(死者5名・負傷者7名)、福岡市の診療所火災(死者10名・負傷者5名)が発生したこと等により、スプリンクラー設備や自動火災報知設備の設置基準や消防機関へ通報する火災報知設備に関する基準の見直しが行われました。
 さまざまな状況の中で、消防関連法令は常に見直しをされていますが、今般改めて記載内容の現行法規への一致を行いました。
 また、消防設備の設計・施工に携わっている方には、広く利用されています『建築消防advice』(建築消防実務研究会編、新日本法規出版株式会社)の参考図書としても活用しやすいように、本書の記載順序の見直しを行いました。
 「防災」という概念は、1995年の兵庫県南部地震以降、地震・津波・土砂災害・洪水・火山噴火など多様な領域に広がっております。本書は消防設備の解説に特化したものですので、『イラストでわかる 消防設備の技術』というタイトルにいたしました。
 これまで以上に、本書を多くの技術者に活用いただき、また災害防止の一助になれば幸いです。
 最後に、本書の原著者であられます中井多喜雄先生、並びにイラストのご担当であられます石田芳子先生には、改めましてご功績に敬意を表しますとともに、このたびの改訂に快く御了承いただき進めることが出来ましたことを厚く御礼申し上げます。

2017年1月 一般社団法人 日本建築協会 出版委員会
上原正行 西 博康