建築設備 基本を学ぶ


はじめに


 建築設備とは、建築物に設ける給排水設備、冷暖房設備、換気設備、電気設備、ガス設備、消火設備、排煙設備、汚物処理設備、昇降機、避雷針などをいう。建築設備は建築物にとって不可欠のものであり、これなしには建築物が建築物として成立しないといっても過言ではない。建築工事において、設備工事費の総工事費に占める割合を見ても、集合住宅・学校は約20%、事務所・店舗は約20-40%、病院・福祉施設は約30-50%となっている。
 建築設備は、人々の利便性・快適性の追求の中で生まれ、近現代に急速に発展・普及した。一方、この発展の過程は、エネルギー使用の増大と地球・都市の環境悪化の過程でもあった。今日では環境保全を抜きにした技術は語れず、建築設備においても高効率化と情報化などによる省エネルギー技術は日々進化を遂げている。建築技術者が設備を学ぶ意義はますます高まっている。
 本書は、建築を学ぶ学生や建築士の資格取得を目指す若い技術者などのためのものであり、建築技術者として知っておきたい建築設備の基本をまとめたものである。したがって、個々の建築設備について深く掘り下げて詳述することは避け、広い視野で全体をとらえ、過不足なく必要最小限の事項をわかりやすく記述するように努めた。本書を読み通すことで、「建築設備」の全体が概観できるものと確信しており、本書が初学者の皆さんに大いに役立つことを願ってやまない。
 本書の発刊に当たり、資料の提供を賜った皆様に深い感謝の意を表します。また、長期にわたる執筆の過程を根気強く見守り、適切な助言をいただいた?学芸出版社の編集部の皆様に厚く御礼申し上げます。
著者一同