図説 やさしい建築施工


はじめに


 建築がどのようにつくられていくのか? それを学習するためにできたのが「建築施工」という科目である。その科目の学習目標は建築ができるまでの流れや注意すべき項目、工法や安全性など多岐に渡る内容を理解することである。
 それを実現するためには、実際の建設現場に行ってその過程を体験することが一番妥当な方法である。ただ現実には、建築を学ぶ者の誰もが実際の建設現場で学習できる機会を持てるわけではない。
 また実際には、建設現場で行われている仕事以外にも別の場所で準備されている仕事が数多く存在している。そのような仕事の種類や内容もよく理解しておかないと本当の意味での「建築施工」を理解したことにはならない。
 実際の建設現場に行くことが難しい場合や建設現場以外の仕事の種類や内容に関しては座学を通して学んでいく必要がある。そのためには「建築施工」に関する教科書を利用することも一つの手段である。その教科書はできればやさしい表現で書かれていることが望ましい。そこで、学生にとって分かりやすい教科書を作成してみようと考えた。
 ところで、わが国の「建築施工」には専門的な基準や取り決めが数多く存在する。教科書を作成するにあたって、それらのすべてを本題として取り上げた場合、学生にとっては難しすぎて読みづらいものになると考えた。そこで、専門的な基準や取り決めなどはできるだけ本題とは別枠の形式で紹介することにした。詳細はそれぞれの項目の専門書を参考にしていただきたい。なお、専門的な基準や取り決めの範囲は二級建築士の学科試験程度とし、試験に出題された箇所については、太字表記をしている。
 また、本題の文章はできるだけやさしい表現とし、イラストや図・写真などと対応させて、気軽に「建築施工」のしくみが理解できるように試みたつもりである。関連する話題をコラムやエピソードとして紹介した。学生の皆さんが“へえー! なるほど!”という視点でまとめることを目標とした。
 この本を通じて、わが国の「建築施工」がどのように行われているのかを理解していただきたい。そのために少しでもお役に立てれば幸いである。

著者