改訂版 イラストでわかる給排水・衛生設備の技術


改訂にあたって


 建築物の構成要素として、一般的に「意匠」「構造」「設備」の三要素があげられます。いま建築設備とはどのように解説されているのでしょうか。ある辞書には、「建築物の機能を果たすために、建築物に備えつけられたもの」と解説されているように非常にわかりにくいものです。建築基準法では「建築物に設ける電気、ガス、給水、排水、換気、暖房、冷房、消火、排煙もしくは汚物処理の設備又は煙突、昇降機もしくは避雷針」と記載しています。しかし、一般的には、建築設備を要素別に「電気設備」「給排水衛生設備」「空気調和換気設備」「昇降機設備」「その他設備」と分類されています。この本はその設備要素の一つである「給排水衛生設備」に関し、初心者の方にも理解しやすく表現した解説書であります。
 私は、今回の改訂監修の依頼を受けた時、若いころに愛読していた『第3版建築設備ハンドブック』(朝倉書店)のことを思い出しました。とくに、その本の最初に書かれていた「初版の序」(故渡辺要、柳町政之助先生)の中の「建築設備」の役割と進むべき方向について書かれている一節であります。
 「眉目秀麗・容姿端正であっても心臓や肺、胃腸などの内臓器官に欠陥障害があれば最早や健全な人間とはいわれない。建物にとって建築設備はいわば人間の内臓のようなもので、建物における諸設備の占める位置の重要性については何人もこれを否定するものはないであろう…」。
 私はこの一節に感銘し、現在もその姿を目指した一人の建築設備エンジニアとして活動しています。ぜひ、建築設備を学ぼうとしておられる皆さんもこの一節を共有してほしいと思っています。とくにここで言う内臓器官すなわち「給排水衛生設備」は、安全な飲料水の提供、最適な下水処理、適切な衛生器具、安全なガス設備そして水資源の確保、水質の問題と近年非常に重要な機能・分野です。しかし、この分野の若手エンジニアが随分減少してきているのが現状であり、残念に思っています。この解説書を読まれた方々には、興味・関心を今まで以上に抱かれ、ぜひともこの分野のエンジニアを目指していただきたいと切に願ってやみません。また、建築に係る技術者もこの給排水衛生設備の基本を知っておくことが、これまで以上に重要であり必要となってくることでしょう。
 この本が出版され20年、法規制も大きく改訂され、各種の単位も国際基準に統一されてきました。また、新しい省エネルギー・省資源対応の機器・器具も誕生し、新技術は日進月歩進化してきています。そこで、この20年を一つの区切りとして、法規制の見直し・単位の見直し・新しい設備等をポイントに改訂をしました。まだまだ、至らないところもあるかと思いますが、読者の方々の一助としてお役に立てれば幸いでございます。
 最後に、この「給排水衛生設備とは何か」をわかりやすく解説されている素晴らしい本を書かれた中井多喜雄先生、並びにわかりやすいイラストを描いていただいた石田芳子先生に敬意を払うとともに、改訂監修にあたり快く御承諾いただき進めることができました。この場をお借りして厚く御礼申し上げます。
2012年7月    
田ノ畑好幸