これからの高齢者住宅とグループホーム


書 評
『地域開発』((財)日本地域開発センター)2004. 11
  日本の高齢化は急速に進んでおり、高齢化社会における住宅のあり方や質について切実に考えなければならない時期が到来している。ここ最近では小規模なケアを行う高齢者向け住宅や、グループホームというものを耳にするようになってきてはいるが、日本における現状は大規模な「施設」が大半を占めている状況である。
  一方ヨーロッパの先進諸国では老人ホームなどの高齢者の住居環境は病院のような「施設」であるべきではなく、「住宅」でなければならないという考え方が行き渡っているようだ。本書では高齢者住宅の建築計画を柱として、高齢者ケアや制度、社会システムといった視点を含めながら北欧(フィンランド、スウェーデン、ノルウェー)、イギリスの高齢者住宅とグループホームの事例を紹介し、日本のこれからの高齢者住宅とグループホームの整備について著者の提言がまとめられている。
  人間が、年老いて痴呆や体が不自由になったとしても安心して暮らせ、人としての尊厳を最期まで保ち続けられるような住宅とはどのようなものか、日本の高齢者福祉と住宅の問題を考える上で参考になる一冊であろう。

『建築士』((社)日本建築士会連合会) 2004. 1
  「いかにして終の棲み家の高齢者住宅やグループホームを大量生産し、これが同時に優れたまちづくりの実現となるか」がこの本の目的。
  著者は東大の建築を出て英国に留学し、北欧諸国を調査。今後の日本の方策を都市計画、経済政策、建築計画の立場から解明する。
  例えば、その一つの方策として、長期介護施設(高齢者住宅)では住まいの費用を居住者が負担する。介護費用と別にするシステムである。ノルウェーも住居費別負担のケア付き住宅制度をとっていると裏打ち。確かに21世紀になっても、日本は車椅子の使えない住宅が続々新築される現状。その時は病院から施設へと行き、住居費は無料となるとの計算からか、現実は大変な待機率……。
  筆者は鋭く、日本の社会的入院費は高い。その人数は異常に多く納税者の高負担であると解明。にもかかわらず痴呆化した本人にとって、その終の棲み家がないとベッド廻りの狭い病室のみである。人間の尊厳の不在……と展開し、日本人の老後の不安は身体が弱り、痴呆化した時、「自己の尊厳が守られる介護整備が期待できない」ところにある。老後の不安解消は長期介護対応の住宅の保障である。それがないから「気休めに倹約し老後に貯蓄している」と厳しい。補助金は建築環境と支援システムの中味の優位性に支払い、優れた建築計画を導くべしと述べ、ノルウェーでは政府住宅銀行が建築計画の専門家集団を抱え、審査すると裏打ち。
  こうして、この本には英国・北欧の視察事例が生々しく緻密に描かれ「建築と生活との関わり」に深い洞察がある。
(吉田あこ)

『建築とまちづくり』(新建築家技術者集団発行) 2003. 11
  高齢者住宅の質、量、政策ともに先進国であるフィンランド、スウェーデン、ノルウェー、イギリス各国の事例をもとに、日本における現状と提案が示されている。それぞれの事例については、ケアユニットの人数、スタッフ数とシフトなどの施設運営について、共有スペースと個室との位置関係など建築的要素、費用負担のシステムなど社会福祉の状況などが多角的に紹介されており、比較をしてみると興味深い。各国の社会的背景や、施設に求められる機能は違っていても、個人の尊厳がいかに守られるか、施設的な雰囲気を払拭し、いかに住宅らしさを作りだすかに重点をおくという共通点があげられている。また、そこから一歩進んで、長期的な介護が必要になっても施設を移る必要のない“終の棲み家”としてのあり方が、施設の機能、社会保障の両面から考えられている。いずれにしろ、日本の実態を考えると驚くほどの充実ぶりである。
  建築プランにより介護の質の向上と経費削減がはかれること、高齢者施設を町の中心地に立地することで周辺住民にとっても利用しやすいコンパクトなまちづくりにもつながることなど、建築的環境がいかに重要かを考えさせられた。
  著者はまとめとして、これからの高齢者施設づくりを新型公共事業とする日本再生プランを提言している。景気対策のみならず、まちづくりへの影響や、質の高い高齢者住宅をモデルにした住宅水準自体のレベルアップも視野に入れており、高齢者施設の建設、運営関係者はもちろん、社会保障制度に関わる行政の方たちにぜひ読んでもらいたい本である。
(晃)

『新建築住宅特集』((株)新建築社) 2003. 8
 ヨーロッパ先進諸国では、老人ホームなどの高齢者の居住環境は、病院のような「施設」ではなく「住宅」でなければならないという考え方がいきわたってきている。また、身体が弱ってきても住み続けられる「終の棲み家」として計画すべきだという流れもあるという。本書は、著者が訪問したさまざまな高齢者住宅(特に痴呆性高齢者のための長期居住施設)の実例を紹介し、それらを通じて考えてきた事柄や今後への提言をまとめたもの。老後の安心を高めつつ、社会的費用を低減するにはどうすべきか。高齢者住宅の建築計画を念頭に置きながら、高齢者ケアのあり方はもとより、制度や社会システムといった側面にも踏み込んで考察されている。