作家たちのモダニズム
建築・インテリアとその背景


書評

『住宅建築』(建築思潮研究所)  2003.5

 与えるのではなく、考えさせる―こうした新たな視点に立った近代建築史が上梓された。この視点が成功をおさめている。
 『作家たちのモダニズム』は、近代建築史を様式別に編集することなく、各作家を辿ることによって、明らかにしようと試みる。しかも、建築のみならず、インテリアから家具までを手掛けた欧米の著名な建築家、ウィリアム・モリスからアルヴァ・アールトまでの14人に俎上にのせ、各作家が生きた時代背景をとりあげ、作家の生涯をたどり、理念・方法を簡潔にまとめ、主要な代表作品をとりあげて丁寧に解説する。
 この簡潔にまとめられた時代背景の記述がいい。〈産業革命〉をキーワードにした時代記述は、社会・建築状況を的確につかみ、その時代背景を受けた、作家たちの理念・方法は読者の理解を大きく手助けする。
 各作家紹介の最終頁には理解を深めるための参考図書が列記されているが、分厚い書籍を無理して読み通すより本書はわかりやすい。例えば、白い男性的な力強い幾何学的な直方体と、水平連続窓、ピロティーなど、ル・コルビュジエの特徴なども実に明快でわかりやすい。コルビュジエの目指したものがわかる。
 参考図書のほか、写真・図版も充実している。多くの写真・図版もビジュアル面で親しみがもてる。写真・図版は400点にものぼっている。
 巻頭には、作家の相関図とともに、年表も表記(遠山の金さんが奉行を辞した年にウィリアム・モリスが神学科の学生になり、その年にアントニオ・ガウディが生まれている―などと、意味があるのかないのかわからずとも、結構楽しめるこの年表もいい。もちろん、年表に金さんの話などは書き込まれていないが)。
 本書は、図式的かつ平面的な近代建築史に陥ることのない、自ら構成した近代建築史を構築できる貴重な資料となった。同時に、自らの考察、再構築は、歴史を踏まえ、自分ならどう考え、どんなものをつくるか、といった主体的なテーゼも呼び起こす能力も得ることになるだろう。こんな歴史を読み解く教材・書籍が教科書にできる時代がうれしい。

(小林一郎)