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初めての〈建築〉数学


は し が き

 ケンチクは、見築であり研築です。が、工学の一分野ですから、どうしても数学がからんできます。見て築くためには、研(数学)を築かねばなりません。

 しかし「数値の世界」の話は、面白くありません。数値を見ただけで拒否反応を起こす人がいます。わたしも、かつてはそうでした。

 わたしは、某大学の生活科学部住居系の学生に「建築の構造計算」の講義をしていますから、そのことは日頃より痛切に感じていました。もっと「数値の世界」の話を何とか面白くできないものか、と悩んできました。大学でも「分数計算ができない学生がいる」との話を実感しております。事実「分数ができない大学生」という本が出版されました(1999年)。

 ちょうどそんなとき、“やさしくて面白い数学ばなし”の本の話がもちあがりました。わたしは、喜んで当話を引きうけた次第です。

 わたしは、数学の専門家ではありません。はたして、こんな本を書くのに適しているかどうか、と迷いました。ましてや、むずかしい数学の話をやさしく書くことはむずかしいことです。さらに、面白い本にすることは、なまやさしいことではありません。困りましたが、いろんな数学の本を読み、勉強しました。

 とくに、中学生の数学を中心に再復習したのです。すべてカラー刷りの「数学の各種教科書(平成14年度用)」の簡潔さと薄さにはビックリしました。週5日制の影響です。このシワ寄せが高校数学に波及していくことは間違いありません。部外者ですが心配しております。いずれにしても、これらの著者がたには感謝いたしております。

 その上で、数学の新しい分野にチャレンジしてみました。チャレンジとは既成の事実に闘いを挑むことをいいます。これは、建築そのものです。

 そのためには、著者自らが、徹底して楽しみながら苦しい仕事に挑戦しなければなりません。それでこそ「楽しさが読者に伝わる」と考えました。それと「楽しく学んだことは後まで役に立つ」との格言を思い出しました。楽しいことは、いいことなのです。

 数字ぎらいの皆様には、たのしみながら本書をお読みいただき「数値の世界」をすこしでも理解してくだされば、本当に嬉しいです。数字計算のところは、自分で鉛筆を握って各頁の右側の余白にマネ・ラクガキをしながら計算を楽しんでください。手を動かせば、記憶は鮮明に残るからです。手は体の外に飛び出した脳味噌なんです。数学ばなしが小説のように読めるかも知れません。

 ところで、建築の数学としては、その部分を各章扉の下に一問ずつ問題を提示しました。問題としては少ないかもしれませんが、数学を楽しんでいただく本にするべく「数学ものがたり」「一口メモ」などに重点をおいたからです。何卒ご理解くだされば幸いです。

 最後になりましたが、本書を出版するにあたり、何かとご苦労をおかけしました滑w芸出版社編集長の吉田隆氏・同編集部の知念靖広氏には、心よりお礼申しあげます。ありがとうございました。

  2002年11月

山田 おさむ   (036)

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