エリアリノベーション
変化の構造とローカライズ


街と観察者


 僕は仕事でたくさんの街を訪れる。プロジェクトでしばらく根をおろすときもあれば、旅人のように短い滞在で移動してしまうこともある。
 時々、変化する街特有の違和感のようなものを感じることがある。出会った人との会話から、リノベーションされた小さな建物から、街角で見かけたフライヤーの束から。その兆しを発見したときの高揚感が好きなのだと思う。
 そんなとき、観察者となって変化の理由とメカニズムを解き明かしたくなる。僕の仕事のスタイルは観察と実践を交互に繰り返すこと。取材からインスピレーションを受けて、それが次の仕事のモチベーションになっている。
 この本の企画を持ちかけてくれた学芸出版社の宮本裕美さんは、この習性を見抜いていたのだと思う。いつも本という乗り物で新しい世界に連れて行ってくれるから、一緒に仕事をしていて楽しい。
 忙しいなか、街を歩きながら長い取材に丁寧に付きあってくれた皆さんにも、この場を借りて感謝したい。見せていただいた変化の風景は、この国の未来を示している。それが読んでくださった方々の活動の何らかのヒントになってくれれば嬉しい。
 今回もOpen Aのみんなには忙しい業務のなか、多くの協力を強いてしまった。この事務所に入った宿命として諦めて欲しい。特に加藤優一くんは取材、編集、執筆まで多岐にわたって活躍してくれた。
 みなさんにとても感謝しています。ありがとう。

2016年4月
馬場正尊