地域×クリエイティブ×仕事
淡路島発ローカルをデザインする



はじめに


  水清く 山美しく 土肥えて 家並やなみ整う 淡路しまかな

 この尾崎咢堂がくどう(行雄)の短歌にうたわれたように、淡路島は、豊富で良質な食材の宝庫として、農水畜産業を中心に栄えてきました。しかしながら現在は、若者が大学進学や就職で島外に出ていき、人口減少や高齢化という大きな課題を抱えています。そのような背景のもと、雇用の受け皿の少ない淡路地域での雇用創出を目指して、2012年度から「淡路はたらくカタチ研究島」をはじめました。
 あなたにとって「はたらく」とは何ですか? そう尋ねたとき、ある人は生活するための手段と答え、ある人は夢を叶えるための過程と答え、ある人はまわりにいる人と笑顔でつながること、と答えるかもしれません。100人いれば100通りの答えがあります。100通りの「はたらくカタチ」があります。自然と人に恵まれ、可能性の種が詰まっている淡路島というフィールドで、あなたの「はたらくカタチ」を見つけてみませんか、というコンセプトでスタートしたわけです。
 この取り組みは厚生労働省からの委託による実践的な地域の雇用創出を目指す事業であり、全国で相当数が採択されていますが、淡路島における取り組みは、仕事を探している方に対する就職のためのスキルアップ支援や、商売をされている方の新商品開発や事業拡大による雇用創出といった、従来の就職・雇用支援に留まるこ
となく、島の豊かな地域資源を生かした家業・生業なりわいレベルの起業をサポートするプロジェクトとして運営されてきたところに大きな特徴があります。
 本書『地域×クリエイティブ×仕事 淡路島発ローカルをデザインする』では、プロジェクト運営のメンバー、講座などの講師を引き受けていただいた専門家、このプロジェクトから実際に淡路島で起業した方など、多角的な視点から、地域でクリエイティブな発想や方法を使って仕事をつくりだすしくみを紹介していきます。
 このプロジェクトが目指してきたビジョンや成果には、淡路島に限らずさまざまな地域で小さな生業をつくりだすヒントが溢れています。本書が全国各地で雇用創出に取り組む人々のお役に立てば幸いです。
 末筆ながら、「淡路はたらくカタチ研究島」の展開の機会を与えていただきました厚生労働省、そして洲本すもと市、南あわじ市、淡路市、洲本商工会議所、五色ごしき色町商工会、南あわじ市商工会、淡路市商工会、淡路地域雇用開発協会、淡路島観光協会をはじめ、「淡路はたらくカタチ研究島」の運営に対し、格別のご支援をいただきました多くのみなさまに感謝申し上げます。

淡路地域雇用創造推進協議会会長/兵庫県淡路県民局副局長
藤森泰宏