地域×クリエイティブ×仕事
淡路島発ローカルをデザインする



おわりに ──新しいカタチのはじめに


 小さな小さな思いつきとひらめきからはじまったイメージが、一人の心から一人の心に伝わり、二人の心に新たなイメージが煌めいた。二人の新たなイメージを別の誰かに伝えると、さらに何人かの人々の心に小さなイメージと可能性が煌めきはじめた。
 しばらく経つと、そのイメージそのものがエネルギーを自ら持ちはじめたかのように加速度を増し、倍々と協力者が集いはじめ、気づけばもう後戻りできないほどの勢いでエネルギーの渦は動きはじめた。多少の抵抗や反発にあっても挫けるどころか余計に情熱をかき立てられ、押せ押せムードは留まることを知らず、熱病にでもかかってしまったかのように、この事業は絶対に実現させてみせる、という信念と熱情とにすっかりとりつかれてしまった。初期の立ち上げメンバーたちはこんな心境だったのかもしれない。何の報酬もないどころか自腹を切って動き回り、ネットワークを築き上げ、企画書を何度も書きかえて、負担の大きい事業に慎重な反応を示す行政担当の方々を無理矢理説得していった。今思えば、あれはいったい何だったのだろうか?と首を傾げてしまうほど、何か大きな力に突き動かされていたとしか言いようがない。きっと淡路島がそのような新しい風を必要としていたのかもしれない。とりあえずそういうことにしておく。
 そして事業が採択され、多くの人々を巻き込み、この四年にわたる大プロジェクトが展開し、たくさんの成果や人々のつながりを生み出した。そして今、「淡路はたらくカタチ研究島」プロジェクトは終りを迎えようとしている。私たちがはじめに感じた熱を持った小さな煌めきが伝染し、これほどたくさんの人々のそれぞれの煌めきに火をつけて、育み、色とりどりの美しい花々となった様子を見ていると、本当に嬉しくて楽しくて、かかわってくださったすべての方々に深い感謝の気持ちが溢れてくる。
 強い想いと情熱とともに協力しあう仲間がいれば、このようなことが可能なのだと知ることができたのはすばらしい経験であった。行政と民間という垣根を越えてともに事業を成功させようとフラットな関係で切磋琢磨できたことも大変嬉しい経験だった。
 この「淡路はたらくカタチ研究島」を通して、ビジネスや仕事のサポートという実質的役割以上に、通常の立場や業種の枠を超えて知識やスキルを共有し、刺激しあい、互いの成長を願いあう、人と人との温かくエネルギッシュなつながりが大きく大きく膨らんでいったことは、何よりも貴重な成果だったように思う。
 これからの淡路島が、さらにどんな流れを生み出していくのだろうか。たくさんの煌めきの種は至る所にまかれ、どんどん成長し、変化し、多様な動きを見せていくだろう。そしてこの地に美しくユニークで多彩な未来を花開かせてくれることを願っている。
 この豊かな淡路島の恵みに感謝し、みんなの小さな煌めきが大きな光になっていきますように。

2016年2月
淡路はたらくカタチ研究島・地域アドバイザー
茂木綾子