森ではたらく!
27人の27の仕事

はじめに



 森ではたらく人たちは、素敵だ。編集チームであるわれわれは、彼らの生き方に触れたくて探るうちに、27通りもの仕事に出会うことができた。「森を伐る人」「森を挽く人」「森を香らせる人」「森で育てる人」…… 彼らの日常は、自分が生まれる前と死んだ後の、だいたい100年くらいの時間を行き来している。彼らの仕事は、小さな生き物や木の繊細な表情と向き合いながらも、何ヘクタールという単位で、やがて風景を変えていく。そんなスケール感と常日頃から対峙している彼らは、自然を感じ取り嗅ぎ分ける鋭敏なセンサーを持ちながらも、「えいや!」とどんぶり勘定で進む度胸を持ち合わせ、仕事と暮らしが絶妙に混ざり合うなかで、「はたらく」すなわち生きることを日々クリエイトしている。

 森という言葉が語られるとき、そこには2次情報が溢れ、なんとなく環境や自然といったぼんやりとした輪郭があるのではないだろうか。しかし、日本の大部分を埋め尽くしているそれは、確かにそこに存在し、そこではたらく人たちがいる職場なのである。この本では、彼らに等身大の想いを綴ってもらうことで、それぞれの目を通して見た、はたらく場としてのリアルな「森」像を描いてみたかった。

 読み終えたとき、読者の皆さんはなにを感じるだろうか。彼らの古くて新しい一風変わった生き方は到底マネできないと思うだろうか。あるいは、な〜んだ自分と変わらない普通の人なんだと親近感を覚えるだろうか。限りなく多彩でクリエイティブ、痛快でひたむきな、森ではたらく27人の世界へようこそ。

古川大輔
山崎亮