北欧モダンハウス
建築家が愛した自邸と別荘

7人の建築家の夢−家族と過ごした時間と空間


 北欧のゆったりとした時間の流れや、シンプルで良質な空間での過ごし方に憧憬の念を抱く日本人は多いだろう。彼らの豊かな生活の根源は一体どこからきているのだろうか? 歴史を紐解いていくと、モダン住宅がひとつのキーワードとなって浮かび上がってくる。

 北欧は地理的条件から、夏は短いが夜になっても太陽が沈まない白夜が続く。冬はその逆で、太陽の姿を見ることが極端に少なく、暗くどんよりした厳しい寒さの日々が続く。北欧の人々にとって、そのような特有な四季をいかに快適に過ごすかが長年の課題であった。そして照明器具や家具などのインテリアが発達し、日常生活の質にこだわりを持つようになったのである。特に家族と過ごす時間と空間を重要視しているのは、言うまでもない。

 グンナー・アスプルンド、アルヴァ・アアルト、アルネ・ヤコブセン、モーエンス・ラッセン、ヨーン・ウッツォン、アルネ・コルスモ、スヴェレ・フェーン。本書では、20世紀の北欧モダンの建築家と彼らの意思を受け継いだポストモダンの建築家の足跡を辿った。彼らの自邸、別荘、その他代表的な住宅を紹介するが、特に自邸と別荘は、彼らの実験の場として新しい試みがなされた。それには家族の協力、特に公私にわたるパートナーとしての妻の協力が不可欠であった。「成功者の陰に賢妻あり」とはまさしくこのことである。

 7人の建築家が追い求めた理想の住宅。彼らはどのようなプロセスを経て、その理想の住宅を実現させたのだろうか。18の代表的な住宅を巡り、妻や家族と過ごした時間と空間、そして《建築家の夢》を探っていきたいと思う。