住まいのミカタ
暮らしに役立つ住居学

はじめに


人は柔軟に生活をしていく能力をもっています。多少の不自由さは乗り越えて日常生活を送りますので、住み方については誰も教えてくれなくても必要に応じて工夫を重ね、問題を解決していくものです。
 
しかしながら、住まいは一生の付き合いですので、早い段階で知っておいた方が良い基礎知識や、ちょっとした気づきによって、生活が豊かになることはたくさんあります。
 
そこで、暮らしに役立つ住まいの見方を三つの型で提示し、人生の早い段階で住まいを味方にすることを意図して本書をまとめました。
 
一つめは「見えるものをよく観る」がテーマです。自分の身の回りや住まいとの関わりを点検してみると、見えていなかった部分がいかにたくさんあるかに気づき、こうしたい、こうありたいという新しい暮らし方を発見するはずです。
 
次は、「見えないものを感じ取る」をテーマに、生活する上で知っておきたい、健康を支える快適な住まい方について解説しています。空気・熱・におい・光・音などの見えない住環境との上手な付き合い方が身につきます。
 
最後は、「見えにくいところを読み解く」をテーマに、インテリアや住まいのしくみ、そして安全などについてコンパクトに解説しました。日々の暮らしの中で、安全に対する知識や住居の基盤となる専門知識をもっていれば、住まいを見る目が変わり、生活の仕方は格段に磨かれていきます。
 
住まいの見方というのは、おかれた状況(引越しや家族の増減など)や年齢によっても変わっていきます。本書は、社会人になる前の大学生にとって、役立つ、ためになる、「住居論のテキスト」を目指したものですが、生活プロや建築プロの方にも初心にかえって点検いただければさいわいです。
 
本書をきっかけに、少しでも住まいへの関心が高まることを願っています。

 平成21年9月
著者を代表して 水上 裕