新訂 日本建築


あとがき

 本書を執筆していると、自身の浅学さがひしひしとわかってくる。それを補うために原著『新版 日本建築』を数回熟読した。たいへん勉強になったが、原著の偉大さが、さらに浮き上がってくる。それゆえ原著の内容を全部載せたいのであるが、頁数の関係が諸々に影響を与えるので調整がいる。付け加えるところはあまり苦労はないが、省くところは相当の覚悟と決断力が必要となる。
 例えば、現場での仕口は割合簡単なものが多く、本格的な仕口が使われることが少ないので、省いてしまうことを考えた。しかし省いてしまうと、本格的な建物が建たなくなってしまい、やがて消えてしまう。したがって、留める必要のあるものはほとんど残し、省けると思ったものは、身を切る思いで省いていった。その結果、不行届きの部分等も多々あることと思うが、お気づきの点があればお知らせいただければたいへん幸せである。
 本書執筆にあたり、原著者渋谷五郎・長尾勝馬両先生の業績の偉大さを改めて認識するとともに、このような形での『新訂 日本建築』発行をご快諾いただいた原著著作権継承者渋谷晧夫・長尾ち子両氏に、心より御礼申し上げます。
 また、多くの人々からアドバイスと励ましとを頂戴して、力をいただきました。特に矢ヶ崎善太郎・末川協両先生には貴重な忠告とご指導を賜り、深く感謝いたしております。また、本書刊行にあたり、その機会を与えて下さった学芸出版社の京極迪宏氏、ならびに全般にわたって、ご苦労とご指導賜った永井美保さんに心から御礼を申し上げます。ありがとうございました。最後になりましたが、日夜我慢を重ねて見守り、期待してくれた妻悦子に礼をいいます。
  2009年7月
妻木靖延