図解ニッポン住宅建築


おわりに

 図書館の膨大な資料を前にして、呆然としたことはないだろうか。建築専門誌のバックナンバーをめくりながら目当ての建築を探す、その途方もない作業に疲れ果てて挫折したことはないだろうか。

  過去の建築事例を研究するためには、とにかく時間と根気が必要である。しかし、建築を設計するうえで、事例研究は欠かすことのできない作業である。なぜなら、過去の事例を知ることで、建築に対する評価軸がはっきりするとともに、歴史的な視点から提案の新しさを考えることができるからだ。

  本書には、多大なエネルギーを要する事例研究という作業を、効率的に、そして効果的に行うためのヒントが書かれている。設計の際のアーカイブとして本書を活用すれば、住宅建築の奥深さの一端に触れることができるだろう。また本書は、戦後日本における住宅建築の年代記としても読むことができる。何となく単発では知っていた住宅建築に対して、時代のなかでのつながりを見つけ、そのおもしろさを楽しんでいただけるだろう。

  本書が出来上がるまでに、多くの方々にお力添えをいただいた。
  まず、お忙しいなか本書の掲載内容をご確認いただいた建築家の方々には、多大なる感謝を述べたい。本書の内容に至らぬ部分があるとすれば、それはすべて著者の責任によるものである。デザインは、著者が以前に勤めていた職場の同僚である、グラフィックデザイナーの河野綾さんにお願いした。著者の思いつきやわがままにも真摯に対応し、本書の意図を明確に表現するデザインをご提案いただいた。建築と建築家のイラストを描いたのは野村彰さんである。著者からの多くの注文を忠実に受け入れ、なおかつ著者の想像を超える力作を仕上げてくださった。帯の推薦文は、ぽむ企画のたかぎみ江さんにお願いした。時代の空気を敏感に読み解く感性で、本書の内容を端的に言い当ててくださった。編集をご担当いただいた学芸出版社編集部の中木保代さんには、多くの迷惑をかけた。彼女の絶妙な手綱捌きが心地よいプレッシャーとなり、本書を完成にまで導いたのは言うまでもない。この他にも、数多くの方々のご厚意に支えられて本書を上梓することができた。この場を借りてお礼申し上げたい。

  みなさん、本当にありがとうございました。

2008年1月吉日
尾上亮介/竹内正明/小池志保子