建築のウンチク


はしがき

 読者の皆さん!『ふすま・障子はなぜ右手前か』と、考えたことがおありでしょうか?
  わたしは『建築関係法令集はどうして薄くできないのか』と、いつも考えてきました。世の中は、すべてのモノがよりコンパクトに、より軽く進化していくのに、法令集だけは「より複雑に、より重く」なっていきます。不思議な現象です。「法は簡単なモノほど良い」という鉄則を忘れた進み方には、悩んできました。
  また『ネクタイのストライプは右上がりか左上がりか、その角度は何度か』と思いあぐね、眠れなくなった経験は、おありでしょうか? わたしは体験しました。
  以上の三句をバカバカしきことなり、と侮るなかれ。実は、日常の習慣と割り切り、なぜそうなったかを見逃しているモノに、建築の根本原理や発想、そして面白さが隠されているのです。
  筆者は、これらのモノを検証すべくマナジリを決して町中を歩き回り、建物にまつわる物語を探ってみました。とくに実例写真の収集には一苦労しております。
  当本は、建築業界の初心者はもとより、すべての人びとに読んでいただきたく、建築面白読物を目ざして無我夢中で制作した小説風?の工学書です。
  読者の皆さんには、ページに関係なくお好きなところよりお読みくだされば幸いです。一口メモだけを一瞥くださっても結構ですよ。
  さらに欲ばって、建築関係者はもちろん一般の方がたに「頭の体操」をしてもらうため、建築士用に似せた演習を用意してみました。一度、チャレンジしてみてください。間違ってもよいのです。人間は、間違いを重ねながら成長していく動物ですから……。

 最後になりましたが、本書を制作するに当たり、何かとご苦労をおかけしました滑w芸出版社取締役編集長の吉田隆氏・同編集部の越智和子さんには深謝もうしあげます。
  ありがとうございました。

2004年12月
山田 修