図説 日本建築のみかた


書評



『庭』(龍居庭園研究所発行) 2001.9

 日光東照宮の極彩色には周到な色彩計画があり、使われている色を分析すれば陽明門が人間世界と神域の「結界」であることが見えてくる。桂離宮の建築や庭園の造形には、『源氏物語』の場面が再現されている。大黒様の本来の姿は暗黒神であり、日本では財宝のシンボルとされている姿は、ブラックホールを象徴している……。などなど、この本には興味深い「エピソード」や「こぼれ話」が、たくさん挿入されている。
 しかし、実はこれは「おまけ」の部分。本文は、日本建築鑑賞の手引である。パラパラとめくったら、囲み記事の方に目が行って、先に拾い読みをしてしまった次第。そして本文に戻ると、そこには日本建築の見方や見どころが、細密な図版、写真とともに解説されている。
 「神社」「寺院」「住宅」「茶室」「城郭建築」の5章から成り、109の建築を収録するが、その中にも、たとえば神社建築には「住吉造」「大鳥造」「大社造」「神明造」という様式があるように、各様式のルーツや歴史的、思想的背景は多岐にわたり、また、建物の配置、屋根の形、組物の種類、間取りなど、計画から細部の技法にいたるまで、見るべきポイントが盛り沢山。
 「太一(北極星のこと)思想」「鬼門封じ」「パースペクティヴの手法」「間合い」「月との関係」など、日本建築を読み解くキー・ワードに注目。



『建築士事務所』((社)日本建築士事務所協会連合会発行) 2001.6

 京都、奈良の寺社や日光東照宮、厳島神社などユネスコの世界文化遺産に登録される建築遺産は数多いが、その見方、見所となるとやや専門的で難解とされるのが一般的だ。本書は数多くの実例をあげて、平易な文章と500点に及ぶ図版を用いてわかりやすくまとめたもの。登場する実例は大崎八幡神社、仁科神明宮、諏訪大社上社前宮・本宮など27神社、浄土寺、蓮華王院(三十三間堂)など37寺院、丸岡城、安土城跡など9城跡、表千家不審庵、慈光院高林庵、水無瀬神宮燈心亭など14茶室、高根木戸遺跡、桂離宮、醍醐寺三宝院、登呂遺跡、日本民家園など22住宅。読み物、ガイドブックとして便利。



学芸出版社
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