福祉住環境 テーマ別用語集



まえがき



 周知のごとく、わが国は国際社会に比べて急速な人口の高齢化が進んでおり、今後の高齢化の推移を厚生労働省の「日本の将来推計人口」でみると、65歳以上の高齢者人口及び高齢化率は、平均寿命の伸長や低い出生率を反映して今後も上昇を続け、平成27年(2015年)には、高齢者人口は3188万人、高齢化率は25%を超え、国民の約4人に1人が65歳以上の高齢者という本格的な高齢社会が到来するものと見込まれています。
 そして在宅の身体障害者は293万人と推計(1996年現在)され、わが国では1981年の「国際障害者年」前後から、身体障害者や高齢者の生活に対する考え方が急速に変化しはじめ、これらの人達の生活に及ぼす障害(バリア)をもたらす物的環境を除去し、いわゆるバリアフリーの仕組みが積極的に形成されるようになり、1994年には「高齢者・身体障害者等が円滑に利用できる特定建築物の建築の促進に関する法律」(ハートビル法)が施行され、かつ、社会福祉向上のための法律も整備・拡充されてきております。いずれにしても社会的弱者である身体障害者や高齢者の社会福祉のなかでも、その大きな一つが住環境であります。しかし、このような人にやさしいバリアフリーの社会的環境の実現には、国民全体で一層の努力を必要とするわけで、人材育成の面からして近年創設された検定制度が「福祉住環境コーディネーター」(1級、2級、3級)であります。なお、2級以上では、介護保険法に基づく住宅改修に関わる専門職として位置付けられています。
 このため、バリアフリーの社会的環境の達成の一助になればとの思いを込めて、2級福祉住環境コーディネーター受験用のテキストと、巻末の索引を利用していただければ2級福祉住環境コーディネーター用語集ともなるようにアレンジした本書を、浅学非才の身をも顧みず編纂した次第です。本書がいささかなりとも皆様方のバリアフリー社会実現のための勉強のお役に立てば幸甚です。
 なお、本書は「2級福祉住環境コーディネーター」の受験に必要な範囲(内容)、レベルのみの事項しか示しておりません。すなわち、本書は、3級福祉住環境コーディネーターの知識は既に理解されているものとして執筆しております。したがって、3級について受験希望される方々は
 東京商工会議所編:福祉住環境コーディネーター・検定試験3級完全マスター 社会保険研究所
 荒木兵一郎監修・中井多喜雄著:福祉・住環境用語集(学芸出版社)
など、適当な受験参考書をご参照下さい。
 最後になりましたが、執筆にあたって多くの著書、文献資料を参考・引用させていただきましたが、巻末にそれらの書名・文献名を掲げてそれぞれの先輩各位に感謝の意を表する次第です。


2000年10月 中井多喜雄