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風土の意匠

次代に伝える民家のかたち



あとがき



 二十世紀を生き抜いた木造民家の記録という、少しおおげさなテーマをかかげてしまった。取材を始めた当初はただ、現在も住んでおり、しかもあまりまちづくり運動などでメジャーな存在でないが、しっかりと型を持っているもの、という程度の枠組みで事例をさがしていたにすぎない。三十回余りの取材を経て振り返ってみると、残ることの意味、生き続ける力の源について考えさせられた。保全すべき歴史的環境の潜在的枠組みの認識のなかに、日本の原風景としての民家がはっきりとみえてきた。過去の出版物の中の写真と目にした現在を比較すると、建築形態は刻々と微妙に変わっている。しかしそのものを見ての思いに変わりはない。つまり改修を重ねながら生き抜いた民家の姿は普遍であった。
 伝統的形式を保ち生きている民家は、城下町に多く見られる。豪商の家でもある。農村部では豪農といわれた家が多い。富の蓄積した場所、それなりの歴史のある場所に、江戸時代から今に伝わる建築技術が保存されている。これは施主なしには成り立たない建築物の宿命か。
 しかしその向こうにある、清水一先生の著作『人の子にねぐらあり』の視点で、住まいの知恵や技術や道理をさがしたかった。宮川英二先生の論文「風土と建築」、若木滋先生の講義「建築計画」を体験的に検証したかった。山口廣先生の『近代建築再見』の方法を私のテーマでやってみたかった。近江栄先生の『光と影・近代建築史の先駆者たち』からもあらためて「屋根型」へのこだわりが頭をもたげた。
 私の取材の覚え書きをつきつめれば、書き記したい見聞は次のように集約される。
 以上のような日本の建築作法が、地域的個性の中にみえた。
 本書をまとめるに当たっては、特に下記の方々のご協力でその土地の風土と建築を学ぶことができた。御名前を記して感謝申し上げたい。
 また末尾ながら、取材の機会をあたえて下さるとともに快く写真の提供を承諾していただいた旭出版企画の渡部常平氏、本書出版を勧めて頂き、編集の労をとられた学芸出版社の吉田隆氏、知念靖広氏そのほかご協力頂いた大勢の方々に深謝申し上げる次第である。


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