やさしい火災安全計画

あとがき


 防火には,あれをしなければならないとかこれをしなさいというきまりが多すぎます。規則にがんじがらめに縛られた結果として,設計者も規則を守ればよいという受け身になり,とってつけたような防災対策が繰り返されています。このため、コストがかかった割りに安全になっておらず,デザイン・機能上も良くないという建築が生まれています。筆者は防災計画評定にたずさわる中で、こういうことをしばしば実感しました。そこで、設計者がもっと自由な発想で自主的に安全な建築を設計するためにはどうすればよいかと,防火関係の図書を読んでみると,エンジニアリングに徹したものと,法規に徹した本が主流で,設計者のための図書がないのに気がつきました。これが,本書のスタートです。

 設計者が気楽に読めて肝心なことはカバーしておこう。そのため,数式や法規は極力避け,平易な表現にするという方針としました。しかし,長年学者をやっている著者の一人には,これが難題で論文を書くときよりも数倍の執筆時間を要しました。

 執筆開始と時を同じくして,建築基準法の性能規定化の動きが出てきました。本書の刊行とほぼ同時に新法は施行となりますが,続いて出される政令・告示の内容は,執筆時点では流動的で,筆者も,政令・告示の技術的検討の委員会に駆り出されて,その合間にこのあとがきを書いています。そのため,避難計算などの細部はいったんは執筆したものの,告示で出される避難計算法との混同,混乱を避けるために割愛しました。設計の初期時点では,本書の内容の理解の範囲で充分であると判断したからです。

 設計者が,防火対応だけでなく,広い視野でデザインも機能も優れた設計をしようとしたとき,本書が役立つことを期待しています。

著者一同


学芸出版社
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