一目でわかる建築計画


あとがきにかえて……本書作成の経緯と謝辞
本書のきっかけとなったのは,次の図書と著者との出合いから始まる.
  G. C. Barkley, D. D. Autore, T. L. Patterson ;
  Architectural Drawing and Design, Macmillan Publishing Company, 1984
 アメリカの大学の建築設計製図教育のための本である.この本では初学者が建築設計に必要な建築知識が一通り述べられている.鉛筆の持ち方から始まって図学,建築史,美学,設計方法,構造,環境設備など必要事項がぎっしりつまっている.アメリカの大学では,建築学科というのは芸術学部にあり,工学は必要最低限の範囲に絞られており,その点ではこの本の水準で建築の全体をカバーしているといっても過言でない.しかし,この本の注目すべき特徴は,徹底的に初学者向けに書かれている点である.たとえば,透視図法の説明では,廊下の左右の幅木のような平行線がグラビア写真の中では,延長すると1 点に集まることを確認し,それが焦点であることから具体的な説明が始まる.著者が注目したのは,日本の大学で建築計画学として教えられている内容についてである.この本では,主にThe functional consideration in designという章の中で説明されている.その説明の仕方が,文章の他に,不都合なプランと推奨すべきプランを並べて図示してあり,何が問題でどうするとよくなるのかがはっきりと,また,一瞬にしてわかるように表現されている.
 東京工業大学青木研究室でゼミの一環として,建築計画,建築設計に必要な知識を,『一目でわかる』ように「不都合なこと」とそれを改善した「こうした方がよいこと」を左右に並べて表現することを試みてみた.参加した学生も最初のうちは,『一目でわかる』ように描くことの難しさに戸惑っていた.しかし,ゼミの回を重ねるに従い学生の表現力が目ざましく向上してゆくのがわかった.同時に学生が建築計画の知識を楽しみながら学んでいるように見えた.1学期が終わる頃には,『一目でわかる』図集が製本して2分冊にもなった.
 そこで,日本大学浅野研究室と一緒に同じことを試みようということになり,合同ゼミを数回にわたって行った.合同ゼミの終わった後のアルコール入りのパーティも和やかに,ときには騒々しく行われ,両大学の学生交流の場としても盛り上がっていた.本書は,このようにして学生達が,アイディアを出して表現したものをべースにしている.この意味で,下記の,ゼミに参加した学生諸氏に最初に感謝の意を表したい.
 その後,成果を出版したいということになり,学芸出版社の吉田隆さんに相談をしたところ快諾していただき,出版へ向けてのアドバイスもいただいた.表現がわかりやすいことがポイントであるため,編集者の越智和子さんには,文章,図表現の細部にわたってのご指摘いただいた.このご指摘のおかげで,『一目でわかる』ようにしたいという著者らの希望により近づけることができた.お礼と感謝の意を表したい.

東京工業大学ゼミ参加学生
石原久一郎  金子 牧子  納富 大輔  百々海 大  村阪 尚徳

日本大学ゼミ参加学生
金  潤煥  秋庭竜太郎  池田紗与花  傳法 一成  星  裕樹
樋口 英輔  直井 宏樹  山崎 裕子  山田 直樹









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