建築の配置計画
環境へのレスポンス


はじめに


 本書は、建築設計を学ぶ学生や建築の実務に従事する方々の配置計画についての解説書として、建築の置かれる環境別にわかりやすくまとめたものです。
 近年自然環境の都市化が進み、都市環境が悪化の一途をたどるにつれ、これまでの建築法規を満たすだけの独善的な配置計画では行き詰まりを見せているのが現状です。特に自然環境や都市景観の保護が叫ばれている現在、建築の立場は環境を悪化させるものとして逆境に置かれつつあり、自然や都市との共生についてより深く考える時期がきているように思われます。
 一方、建築設計を行う者にとって、配置計画は平面計画を行うのに先立つ重要なポイントであることは言うまでもありません。言い換えれば、建築計画において、誰もがまず遭遇する難関であるといっても過言ではないのです。
 にもかかわらず従来、建築を取り巻く環境にゆとりがあった時代には、建築の配置の考え方について、それだけを取り立てて詳しく著されるということはほとんどありませんでした。
 そこで、これまで建築計画のテキストの冒頭でわずかに解説されていたに過ぎない配置計画について、より詳しい専門のテキストを作ることはできないかと考え、本書を著しました。執筆にあたっては以下の4点に留意しました。


1 古今東西の建築の配置計画について基本事項をまとめた「序章」に加えて「自然へのレスポンス」「都市へのレスポンス」「精神社会へのレスポンス」の三つの環境対応形式別に分類しました。これにより、建築の置かれる環境別にその配置の考え方を明確に理解できると考えたためです。また各章に総論として、それぞれの考え方や特徴を写真やイラストを用いてビジュアルに解説しました。

2 各章別の環境の分類をさらに4〜5項に細分割し、各項扉の解説に、配置計画の考え方を身近な例を挙げて詳細に解説しました。

3 各項は8〜20の国内外の配置計画の実作品例を掲げ、その計画意図と特徴を平易な文章で解説しました。

4 解説内容については、従来の建築法規や敷地条件の分析方法に加え、最近注目を集めつつある風水学や環境問題、都市景観、精神社会等の視点から多角的に理解できるよう配慮しました。

 以上のような本書の特徴が、皆様の配置計画の理解に役立てば、著者として無上の喜びです。

著者