サイト 建築の配置図集
SITES Architectural Workbook of Disposition

まえがき|Foreword
この本は、建築物をさまざまな広がりの配置図の中でとらえ直すものです。

建築の分野では、配置という言葉が、いたるところで使われます。建物の敷地内での配置や、敷地のコンテクスト(敷地の配置)も含んだ建物の配置、また、一つの建物内部の空間単位や柱や窓等の構成要素の配置まで、建築では、ほとんどが配置の問題と言ってもいいかもしれません。すべてが配置であると言うと急にとらえがたく、厄介な問題のように思えてきますが、実際に配置図を見てみれば、少しはとりつく島があるように感じます。

配置図には限界がありません。平面図や断面図は建てようとする対象の建物を描きますが、配置図は周囲をどこまで描くかは定まっていません。ある建物が関係する(と思われる)範囲や、敷地や地域が関係する範囲、または、それらがもはや周囲と関係していないことが分かる範囲までを示そうと考えると、そのズーミングには際限がありません。

対象の建物をとりかこむ周辺をどこまで描くかについては、配置図を描く設計者の配慮に任されています。配慮、気配り、目配り、配意…「配」という字はそういう意味を含んでいることに気づきます。周囲のものの存在を認めて、それらとの関係の中で、みずからを定位し、関係を築こうと試みることが配置するという行為です。

この配置図集は、際限のないズーミングをなんとか暫定的に定め、その中に建築における新しい関係の多様性を提示しようとするものです。

本書の使い方|How to use
[平面図兼配置図]
この本の中では、ほぼすべての配置図は「平面図兼配置図」と表記されます。平面図で描かれているのが対象とする建物で、それ以外の建物が配置図、つまり屋根伏図の集合として描かれています。

[作品のならび方]
ズーミングの順に作品はならんでいます。またそれぞれのズーミングによって認知できる事象をキーワードで表現して、いくつかの建築作品をまとめました。建物を上空のかなたから引いて見ている状態から、だんだんと近づいて寄っていくように、ズームインしながら順序どおり読むことも、あるいは逆に最後からズームアウトしながら読んでも楽しめるでしょう。

[解説と問い]
配置図の見方のヒントになる問いを設けています。漠然と眺めているだけでもさまざまな発見がありますが、問いに導かれて初めて気づく見方もあるはずです。また、配置図では十分にわからなかったり、表現しきれない部分を解説ページで示しています。
なお、問いの答えは1つではありません。www.haichizu.orgに投稿されたさまざまな意見や
関係図書へのリンクを参考にして自分だけの答えを見つけてください。