歴史・文化のまちづくりニュース NO.16

発行・歴史・文化のまちづくり研究会
発行日 1999年9月16日
文京区本郷4-1-7-3F(エコプラン内)
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03-3814-3594(ファクス)

●「第6回 歴史・文化のまちづくりセミナー」開催のお知らせ

佐藤重夫先生 日本建築学会大賞受賞記念講演会
「瀬戸内海のこれから」

 碩学シリーズ第3回として、今年度日本建築学会大賞を受賞された、佐藤重夫広島大学名誉教授を講師に迎えて受賞記念講演会を行います。長年、瀬戸内海に関係して来られた経験を踏まえて、エーゲ海、アドリア海といった国際的な視点から瀬戸内海地域の自然、景観、文化、資源など様々な角度で瀬戸内海のこれからの展望を語っていただきます。その後のパネルディスカッションにもご参加いただきます。
 来年、米寿を迎えられるとのことですが、精力的にご活躍されています。広島から足を運んで下さってのご講演ということで、今からとても楽しみです!
 ぜひ、ふるってご参加下さい!10月29日、盛況のうちに無事終了致しました。詳しくは、ニューズレター17号




●「日本勧業銀行本店 別棟・クラブハウス見学会」が開催されました!

 日本勧業銀行別棟の発見に伴い、別棟及びクラブハウスの見学会が8月28日(土)に開催されました。
 8月25日付きの読売新聞朝刊で、この発見が記事として取り上げられたこともあり、当日は地元目黒区民グループ、日本建築学会(歴史意匠委員会)日本建築家協会(保存問題委員会)をはじめ各種団体の関係者など約55名(読売新聞報道)あまりが参加しました。(別紙新聞記事参照)
 また、読売新聞をはじめ、NHK、テレビ朝日、TBS、MXテレビなどマスコミ関係の取材も入り大いににぎわいました。

 明治期の建築界の巨頭・妻木頼黄(よりなか)設計と思われる別棟については、堂々とした、気品あふれる風格に圧倒される思いでした。
当地に移築された後は、管理事務所、最近は倉庫として使用されていたこともあり、内部は大変荒れてはいますが、唯一壁際にしつらえられた木製長椅子は、創建時の使用目的が待合いであろうかと想像させる存在です。

 別棟とグラウンドを挟んで立地するクラブハウスは、昭和初期のスパニッシュの流行を取り入れた、情趣のある建物です。昭和12年に建設され、当時モダンなクラブハウスとして話題になり、日本建築学会の編集による「新版日本近代建築総覧」にもリストアップされています。屋根はスパニッシュ瓦と織部瓦の併用です。ホール天井の木製の化粧トラス、暖炉回り、廊下突き当たりのステンドグラス等が、創建当時の姿をよく伝えています。
 見学の後の意見交換では、参加者から活用に向けての様々なアイデアが出され、活発な意見交換となりました。また、身近に存在した、貴重な歴史的遺産に驚き感激し、是非、保存・活用を考えるべきとの意見が多数を占めました。
 今後の保存・活用に向けては、以下の団体が要望書を提出し、他の団体も提出する予定です。今後の展開に注目したいと思います。
(報告:渡辺勝雄)

<要望書、陳情書を提出した団体> ( )内は提出日
   歴史・文化のまちづくり研究会(7/30)
   全国町並み保存連盟(8/27)
   目黒の環境を守る会(8/31)
   日本都市計画家協会(9/07)
   鷹番住区住民会議・鷹番1,2丁目町会(9/09)
   日本建築家協会(9/14)
   日本建築学会(予定)

<地元の町会長会議(9/9)で話題となる!>
9月9日(木)、地元の鷹番住区(第七出張所)住民会議の五町会町会長会議で、この建物を残していこうという話になりました。近々、住民主催のシンポジウムを開催する予定。


●<連載企画>みんなのたてもの・まちなみ その4

 メキシコシティにはスペイン統治時代の重厚なコロニアル建築が現存し、今もお店として利用されている。またタスコ(TAXCO)は18世紀の壮麗な建物が建ち並んでいる。ここはスペイン人により北米大陸最初の鉱山が作られ、銀の発掘で栄えた高原の町。その後、鉱山以外の産業が育たなかったため古い町並みが美しく残り、現在国定コロニアル都市になり、中世のお伽話のような雰囲気を醸しだしている。栄枯盛衰の歴史を経て、コロニアル建築と石畳が続くロマンチックな洗練された町並みが残されていた。
 日本の町並みと比べてなぜ美しいのかと考えてみると、多くの建物の間で様式、色、形、高さ、材料、そして環境との間に調和と統一があることが素人の観光客にも容易に想像できた。わが国で戦後建てられた公営・公団住宅を見ても、コンクリート製の箱を杓子定規に並べただけで、刑務所のように味気ない。
 仄聞するところによると自由を尊重するヨーロッパでは町を美しくするためにしっかりした計画が立てられ、土地の利用の仕方、個々の建物の高さ、形、色にまでコントロールが加えられているという。
 和の精神を重んじ、集団主義・画一主義が強い筈の日本では地主が自分の土地に関する権利を振り回し、また建物の色とか形に関しても私的自由が行き過ぎて乱脈放縦を極めている。また、一坪地主運動というものもあるが、これは私的所有権の濫用のすすめに他ならない。このような不可解な現象が多発する原因は、多分、自由主義・民主主義が「カラスの勝手至上主義」に堕落したからであろう。こういう病気を克服するためには、まず『美しい村』『美しいまち』という感覚を取り戻さなければならない。そのための一つの方法として、全国の各地方自治体の間で美しさを競いあったらいいと思う…と故天谷直弘氏が言っていたことを思い出した。
 8月22日付サンケイ新聞の『看板建築』の記事で川越と千葉にしか登録文化財がなく華のお江戸にはないという。そんなことあっか!自称江戸っ子の血が騒ぎ、7〜8年前に"電通"へ所用で行った際に見付けた宮川商店を思い出し、出掛けて写真を撮り、新聞社で「歴史・文化のまちづくり研究会」の所在を確かめ、蓑田さんにご注進におよんだ次第。建築に関する知識はゼロ。果たして価値あるものか、専門家調査結果がどうでるか楽しみだ。価値あるものなら江戸っ子としてこんな嬉しいことはない。
 美しくなるということは難しいことかもしれないが、少なくとも誰がみても醜いと思うような行動は慎まなければならない。人々の振る舞い、そして家屋や町並みが美しくなったら、それだけで国際社会における日本の地位は随分と高まることだろう。
(報告:高木 貞)


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