リノベーションの教科書

小池志保子・宮部浩幸・花田佳明・
川北健雄・山之内誠・森一彦 著

内容紹介

リノベーションを学び、設計やプロジェクトに取り組むための入門教科書。住宅や学校、商業施設などの建物単体から地域レベルまで、計画手法を事例とともに解説し、調査・設計・現場・運営の実践ポイントも充実。講義テキストとしてはもちろん、学生から実務者まで、初めてリノベに取り組む人の手引きとして最適の1冊。

体 裁 B5変・172頁・定価 本体2800円+税
ISBN 978-4-7615-2673-3
発行日 2018/04/20
装 丁 UMA/design farm

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紙面見本目次著者紹介はじめに正誤情報
■実例を通して、ビルディングタイプ別の計画手法が学べる紙面

 

■従来の建築教育ではあまり見られなかった、事業性を考えた実例も。

 

■第3部はオールカラーでリノベーションプロジェクトの進め方を解説。

 

■具体的なポイントが豊富で、初学者にもよくわかる!

 

■座学から現場まで、入門に最適の一冊!



はじめに

第1部 リノベーションの考え方

第1章 リノベーションという論理

1・1 「すべてはリノベーション」という発想
1・2 リノベーションという論理の成り立ち

1.〈物としての建築の保存・継承 あるいは撤去・更新〉のレンジ
2.〈評価〉のレンジ
3.〈時間性〉のレンジ

1・3 リノベーションによって獲得される世界

第2章 リノベーションの企画

2・1 使い方から発想する

1.ストックは新たなアクティビティの受け皿
2.マーケットを創造せよ
3.空間とアクティビティを同時に創造せよ

2・2 建築再生がまちに必要なわけ──事業性からの見立て

1.事業性が問われる時代
2.インキュベーションの場としての古い建物の可能性

2・3 さまざまな用途へのリノベーション

1.既存建築の特性を活かす
2.手段としてのリノベーションのメリット

2・4 リノベーションの実現に向けて

1.事業性の確認
2.リノベーションに関わる最低限の建築法規

第3章 リノベーションのデザイン

3・1 リノベーションと場所

1.状況を読むこと
2.状況を変えること
3.状況を受け継ぐこと

3・2 建物の大きさを変える

1.建物を増築する
2.建物を減築する
3.部屋の大きさを変える
4.寸法体系を変える
5.人の動き方を変える

3・3 使い方を考える

1.複合的な使い方をする
2.空間をシェアする

3・4 素材とディテールで表現する

1.新旧の対比
2.新旧の継続

3・5 時間をデザインする

第2部 再生時代の計画学

第4章 住宅のリノベーション──プランニングと事業性

4・1 住宅のストックが増えた背景と課題

1.住宅ストックが蓄えられた背景
2.中古+リノベーションという選択肢

4・2 変わる住宅像
4・3 既存住宅を現代のライフスタイルにフィットさせる

1.部屋数よりも広がり優先に──Casa Dourada
2.引き算のデザインでリノベーション──1930の家
3.紡がれた時間を継承するために不動産企画から始める──龍宮城アパートメント

4・4 リノベーションがつくり出す成熟社会の住宅

第5章 住宅団地のリノベーション──多様なライフスタイルに呼応した住環境づくり

5・1 住宅団地の変遷と課題

1.団地のマネジメント
2.近隣住区のリノベーション
3.共同住宅の住戸の変遷

5・2 多様なライフスタイルに呼応する実践例

1.団地に福祉機能を埋め込む──泉北ほっとけないネットワーク
2.郊外の住宅団地の改修事業──たまむすびテラス
3.ミックストデベロップメント──パークヒル

5・3 団地に新しい価値を創る

第6章 長屋・町家のリノベーション──都市の木造住文化から始めるまちづくり

6・1 木造による建築ストック群

1.建築ストックとしての課題
2.古くて新しい都市型の住まい
3.伝統の尊重

6・2 都市型木造住宅リノベーションの実践例

1.長屋からまちをつくる──豊崎長屋
2.まちにつながるデザイン──頭町の住宅
3.オープンな暮らしの器──ヨシナガヤ
4.集まって暮らす──大森ロッヂ

6・3 都市型木造住宅の魅力を伝える
6・4 長屋・町家の魅力とまちづくり

第7章 古民家のリノベーション──文化的価値への着目とその継承

7・1 古民家の文化的価値

1.失われゆく古民家
2.古民家リノベーションの社会的意義
3.古民家の文化的価値

7・2 古民家リノベーションの実践例

1.間取りの継承と現代生活空間との調和──中井邸
2.古材の残し方に見る歴史性の継承──大前邸
3.地域への波及効果と地域文化の醸成──ジャルディーノ蒲生

7・3 文化的価値の継承に向けて

第8章 学校のリノベーション──学びを通した新たな拠点づくり

8・1 点在する貴重な空間資源としての学校
8・2 学校をリノベーションするときの手がかり
8・3 学校のリノベーションの実践例

1.新しい学びの場の創出──アーツ千代田 3331
2.空間とプログラムの重ね描き──鋸南都市交流施設・道の駅 保田小学校
3.過ぎた時間の定着──MORIUMIUS
4.木造校舎を使い続ける──篠山市立篠山小学校
5.重要文化財の校舎で学ぶ──八幡浜市立日土小学校

8・4 学びを通した新たな拠点づくりを目指して

第9章 産業遺産のリノベーション──特殊な空間への着目とその利用

9・1 産業遺産とは

1.産業遺産の価値
2.産業遺産の転用
3.建築と土木を横断する

9・2 産業遺産のリノベーションの実践例

1.特殊な形態を活かす──灘高架下
2.大規模な遺産を活用する──犬島精錬所美術館
3.木造の倉庫・蔵を活用する──3つのアール・ブリュット美術館
4.来歴を調べて改修する──東京駅丸の内駅舎

9・3 産業遺産の活用に向けて

第10章 オフィスビルのリノベーション──機能進化か刷新か

10・1 オフィスビルのストックが増えた背景と課題
10・2 大規模オフィスの進化と中小規模オフィスの刷新
10・3 多様化するオフィス改修

1.創意を駆り立てるオフィス──ザ・パークレックス日本橋馬喰町
2.90年以上使い続けられている人気のオフィスビル──船場ビルディング
3.進化し続けるオフィスビル――霞が関ビル
4.オフィスビルから宿泊施設への転用──HATCHi金沢

10・4 変わるオフィスのあり方

第11章 商業施設のリノベーション──消費の変化と地域拠点化

11・1 商業施設のストックが増えた背景と課題

1.中心市街地に大型商業施設のストックが増えた背景
2.大型商業施設の再生における課題

11・2 建物単体にとどまらない再生
11・3 新たな地域拠点としての再生

1.商業施設改め文化施設としての再生──アーツ前橋
2.商業施設の再生プロセスにソーシャルデザインを組み込む──マルヤガーデンズ
3.商業ビルから地域の魅力を伝える宿泊施設への転用──タンガテーブル

11・4 消費の場から地域のコンテンツ創造の場へ

第12章 エリアのリノベーション──多様な実践の重なり

12・1 エリアのリノベーションとは

1.都市計画とリノベーション
2.要素どうしの関係づけ
3.事業主体の多様性

12・2 都心部のオープンスペース──道路や河川の利活用

1.道路空間の再編──歩行者空間の充実による賑わいづくり
2.水辺空間の利活用──水都大阪
3.多様な主体の連携

12・3 密集市街地の魅力を活かす──取り残された木造住宅の歴史文化的価値の見直し

1.長屋の再生活用──空堀地区
2.身近なリノベーションの集積──中崎地区・豊崎地区
3.地域活動への広がり──昭和町駅周辺

12・4 工業地の特性を活かす──産業構造の変化に対応

1.創造的活動拠点への転換──北加賀屋クリエイティブ・ビレッジ

12・5 郊外住宅地の個性を活かす──個別更新によるまちの魅力づくり

1.住宅をまちとつなぐ──禅昌寺町周辺

12・6 中山間地域における産業創出──多様な活動の連鎖

1.「創造的過疎」への挑戦──神山プロジェクト
2.リノベーションが守る風景

12・7 主体的活動の重なりとしてのエリア価値の向上

第3部 リノベーションを実践しよう

第13章 リノベーションのための調査

13・1 建物を知ろう

1.流れをつくろう
2.実測しよう
3.野帳に描いてみよう
4.写真を撮ろう
5.構造を把握しよう

13・2 エリアを知ろう

1.まちに出よう
2.資料を調べてみよう
3.用途地域を調べてみよう
4.家賃を調べよう

第14章 リノベーションの計画と設計

14・1 企画を始めよう

1.まずは使ってみよう
2.ターゲットを探そう
3.計画をつくろう

14・2 計画を練りあげよう

1.検討を重ねよう
2.図面で考えよう
3.変えるものと変えないものを考えよう(木造編)
4.変えるものと変えないものを考えよう(RC造編)

14・3 プレゼンテーションしてみよう

1.プレゼンテーションシートにまとめてみよう
2.ダイアグラムを使ってみよう
3.色々な表現に挑戦しよう
4.計画を共有しよう

第15章 リノベーションの現場と運営

15・1 現場に出よう

1.状況を観察しよう
2.ディテールで考えよう
3.色や素材を決めよう
4.DIYをしてみよう

15・2 運営してみよう

1.再び使ってみよう
2.建物に関わり続けよう

小池 志保子(こいけ・しほこ)

1976年生まれ。2000年京都工芸繊維大学博士前期課程修了、中村勇大アトリエ勤務。2002年ウズラボ共同設立。現在、大阪市立大学大学院生活科学研究科准教授。博士(工学)、一級建築士。2006年より大阪長屋の再生に関わり、「豊崎長屋」でグッドデザイン賞サステナブルデザイン賞ほか受賞。共著書に『ほっとかない郊外 ニュータウンを次世代につなぐ』(大阪公立大学共同出版会、2017)など。(担当:3、6、9、13~15章)

宮部 浩幸(みやべ・ひろゆき)

1972年生まれ。1997年東京大学大学院工学系研究科修了。北川原温建築都市研究所、東京大学工学系研究科助手、リスボン工科大学客員研究員を経て、2007年スピークのパートナーとなる。建築作品に「龍宮城アパートメント」「リージア代田テラス」など。共著書に『世界の地方創生』(学芸出版社、2017)。2015年より近畿大学建築学部准教授。博士(工学)、一級建築士。(担当:2、4、10、11章、13・14章の一部)

花田 佳明(はなだ・よしあき)

1956年生まれ。1980年東京大学工学部建築学科卒業、1982年同大学院修士課程建築学専攻修了。日建設計を経て、1997年神戸芸術工科大学環境デザイン学科助教授、現在同教授。博士(工学)。日本建築学会賞(業績)、日本建築学会教育賞、同著作賞、ワールド・モニュメント財団/ノール モダニズム賞受賞。著書に『植田実の編集現場』(ラトルズ、2005)、『建築家・松村正恒ともうひとつのモダニズム』(鹿島出版会、2011)など。(担当:1、8章)

川北 健雄(かわきた・たけお)

1959年生まれ。1987年京都工芸繊維大学大学院修士課程修了。1992年コロンビア大学大学院MSAAD課程修了。1993年大阪大学大学院博士後期課程単位取得満期退学。講師、助教授を経て2005年より神戸芸術工科大学教授。博士(工学)、理学修士、一級建築士。共著書に『初めての建築設計 ステップ・バイ・ステップ』(彰国社、2010)、共同作品に「禅昌寺キオスク」など。(担当:12章)

山之内 誠(やまのうち・まこと)

1969年生まれ。2000年東京大学大学院博士課程修了。博士(工学)。神戸芸術工科大学専任講師、助教授、准教授を経て、2017年より同教授。著書に『太山寺観音堂・羅漢堂保存修理工事報告書』(太山寺、2004)、『三木の町並み』(三木市文化遺産活性化委員会活性化実行委員会、2014)など。(担当:7章)

森 一彦(もり・かずひこ)

1956年岐阜県生まれ。1982年豊橋技術科学大学大学院建設工学専攻修了。1999年大阪市立大学大学院生活科学研究科助教授、2004年より大阪市立大学大学院生活科学研究科教授。一級建築士、博士(工学)。人間環境学会賞、日本都市住宅学会賞業績賞、大阪市立大学優秀教育賞など受賞。編著書に『エイジング・イン・プレイス 超高齢社会の居住デザイン』(学芸出版社、2009)、『福祉転用による建築・地域のリノベーション』(学芸出版社、2018)ほか。(担当:5章)

本書は、建築からまちや地域までのリノベーションについて、その考え方の基本的枠組みから企画や設計の具体的方法までを、多くの事例を通して実践的に説き起こしたものである。

高齢化や人口減少が大きな問題として認識されるようになるにつれ、既存の建物や空間を活かすリノベーションという方法が注目されるようになってきた。そして関連書籍の出版も増えたが、その多くは、国内外の先進的事例の紹介や、それらの背後にある社会的・経済的・建築生産的問題の分析であり、しかも、リノベーションの対象の種類ごとに別の書籍としてまとめられる傾向もあった。

そこで本書では、理論と実践という座標軸、および建築からまちや地域までという座標軸をクロスさせ、さらにそこへ、新築から改修までを時間軸上で連続的に捉える視点を加えることで、リノベーションという方法の全体像を立体的に浮かび上がらせようと考えた。

この方針に基づき、本書は3部から構成されている。第1部「リノベーションの考え方」では、リノベーションという方法の論理的な成り立ちや、それを企画し実践するための基礎的な知識を整理した。第2部「再生時代の計画学」では、住宅、学校、オフィスビルといったさまざまなビルディングタイプの建築から、まちや地域までのリノベーションの仕組みを、多くの具体的な事例を通して分析した。第3部「リノベーションを実践しよう」では、さらに具体的に、リノベーションを実践する際のノウハウを、調査、計画、設計、現場、運営といったステップごとに詳述した。

6人の執筆者は3つの大学の教員であり、しかも建築計画や建築史の研究、そして具体的なプロジェクトの実践を通して、多くのリノベーションに携わってきたメンバーである。本書でも、それぞれが実際に関わった事例をたっぷりと紹介した。したがって、読者の皆さんには、あたかもそれらの現場にいるかのような臨場感も味わっていただけるに違いない。

本書は「教科書」と銘打っているように、まずはさまざまな教育機関での講義や実習のテキストとして使っていただき、リノベーションへの関心を若い世代に浸透させる一助となることをねらっている。さらに本書は、1冊の読み物としても機能するはずで、具体的なリノベーションのプロジェクトに関わる機会のある学生諸君には、それを推進するための参考書として使ってほしい。そして、すでに実務に携わっている方々にとっては、日々の実践の意味を見直し、その位置づけを確認するための手がかりとなれば望外の喜びである。

2018年3月吉日

著者一同

正誤情報=第1版1刷

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